障がい福祉事業者のための「虐待防止」のポイントと虐待防止の義務化

障がい福祉事業者のための「虐待防止」のポイントと虐待防止の義務化

障がい福祉事業者の【虐待防止の取組み】

障がい福祉サービス事業者には、利用者の尊厳や権利を守るため、虐待を未然に防止するための取組みが求められています。

虐待防止というと、「虐待をしなければよい」という認識になりがちですが、それだけでは十分ではありません。

虐待に該当する行為の中には、暴行や傷害など、内容によっては犯罪として刑事責任を問われる可能性のある行為もあります。「支援のためだった」「本人のためを思って行った」という認識であっても、その行為が利用者の権利や尊厳を侵害していないか、十分に注意する必要があります。

また、虐待防止は管理者だけが理解していればよいものではなく、実際に利用者と接する従業者一人ひとりが、虐待について正しい知識と認識を持つことが重要です。

そのため事業所では、虐待防止に関する研修や周知を行うとともに、日頃の支援方法を振り返る機会を設けることが大切です。

「この対応は適切だったか?」
「利用者の意思や尊厳を尊重できているか?」

こうした視点を事業所全体で共有し、虐待を起こさないための組織づくりにつなげていきましょう。

 

障がい福祉事業者に求められる「虐待防止の取組み」

平成24年10月に「障害者虐待防止法」が施行され、障がい福祉事業者には、利用者の権利を守り、虐待を未然に防止するための取組みが求められています。

虐待は単なる「不適切な支援」ではありません。行為の内容によっては、刑法上の犯罪に該当する可能性もあります。

障がい者虐待の5つの類型

障害者虐待防止法では、虐待を大きく5つに分類しています。

① 身体的虐待
殴る、蹴る、つねるなどの暴力や、正当な理由なく身体を拘束する行為など。

② 性的虐待
性的な行為を強要する、本人の意思に反して裸にする、わいせつな言動をする、着替えや排泄場面を撮影するなど。

③ 心理的虐待
怒鳴る、侮辱する、悪口を言う、人格を傷つけるような扱いをする、無視するなど。

④ 放棄・放置(ネグレクト)
必要な食事や水分を与えない、必要な介助をしない、病気やけががあっても適切な対応をしない、他の利用者等による虐待を放置するなど。

⑤ 経済的虐待
本人の同意なく財産や預貯金を処分したり、本人に必要な金銭を渡さなかったりする行為など。

虐待は犯罪になる可能性も

虐待行為は、その内容によって暴行罪、傷害罪、逮捕監禁罪、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪、脅迫罪、強要罪、侮辱罪、保護責任者遺棄等罪、窃盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪など、刑法上の犯罪に該当する可能性があります。

そのため従業者に対しても、「虐待をしてはいけない」というだけでなく、虐待は重大な権利侵害であり、犯罪となる場合もあるという認識を共有することが重要です。

障がい福祉事業所による虐待防止

1 虐待の早期発見に努める

2 事業所・従業員による虐待発見時の通報

虐待を受けたと思われる障がい者を発見した場合には、市町村への通報が必要です。

「虐待かどうか確定してから報告する」のではなく、虐待を受けたと思われる段階で通報義務が生じることが重要なポイントです。

また、通報したことを理由として、従業者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをしたりすることは認められていません。

3 市町村への通報後の対応

市町村への通報等により障がい福祉施設・事業所における虐待が疑われる場合、行政による事実確認や調査が行われ、必要に応じて障害福祉サービス事業者等に対する指導・監査などの権限が行使される場合があります。

また、都道府県では、虐待の状況や講じた措置等について公表が行われます。

つまり、虐待に関する通報は事業所内部だけの問題ではなく、行政による調査や指導・監査、その後の措置につながる可能性があります。

※ただし、虐待の通報があっただけで、事業所名が直ちに公表されるという意味ではありません。公表は、都道府県内における虐待の状況や講じられた措置等を明らかにする制度であり、個別の事業所名が必ず公表されるものではありません。

厚生労働省の調査によると、令和6年度の障害者福祉施設従事者等による虐待の相談・通報件数は、全国で5,870件となっています。このうち、虐待と判断された件数は1,267件、被虐待者数は2,010人となっています。

 

障がい福祉事業所における虐待防止の取組み

障がい福祉事業所には、障害者虐待防止法や障害者総合支援法に基づく運営基準等により、虐待防止のための体制整備や取組みが求められています。

特に、事業所では次の取組みを確実に実施することが重要です。

① 虐待防止委員会の定期的な開催と従業者への結果の周知
② 従業者に対する虐待防止研修の定期的な実施
③ 虐待防止の取組みを適切に実施するための担当者の配置
④ 利用者や家族からの苦情・相談に対応する体制の整備

さらに、虐待を未然に防止するためには、事業所の理念や支援方針の明確化、マニュアルの整備、従業者の人権意識の向上、個別支援計画に基づく適切な支援、職員が相談しやすい職場環境づくりなど、組織全体で継続的に取り組むことが重要です。

令和3年(2021年)度報酬改定により、令和4年度から障がい者虐待防止の更なる義務化

義務化の内容 

 ① 従業員への研修実施(年1回以上) 

 ② 虐待防止委員会の設置と検討結果を従業員に周知徹底(虐待防止委員会については最低年1回は開催する必要がある)、

 ③ 虐待防止のための担当者の設置

     ①②③は令和3年度まで努力義務、令和4年度以降は義務化 

虐待防止委員会とは

  • 専任の虐待防止担当者を置くこと
  • 構成員は、利用者やその家族、専門的知見のある第三者等を加えることが望ましい
  • 法人単位での設置も可(身体拘束適正化委員会との一体運営も可)
  • 委員会の開催人数は管理者や虐待防止担当者(児童発達支援管理責任者等を配置)は最低参加すること。検討結果を従業者に周知徹底することが必要。

虐待防止委員会の役割

  • 虐待防止のための計画作り(虐待防止の研修、労働環境、条件を確認、改善するための実施計画づくり、指針の作成、報告様式の整備
  • 虐待防止のチェックとモニタリング(虐待が起こりやすい職場環境の確認等)
  • 虐待発生後の検証と再発防止策の検討(虐待やその疑いが生じた場合、事案検証の上、再発防止策を検討、実行)

 

令和6年(2024年)度報酬改定により更なる障がい者虐待防止推進

虐待防止措置未実施減算の新設

虐待防止はこれまで減算規定はありませんでしたが、下記①から③を満たしていない場合か減算となります。NEW

①虐待防止委員会を定期的に開催し結果を従業員に周知徹底すること

②従業員に対して虐待防止の研修を定期的に実施すること

③①②を適切に行う虐待防止担当者を置くこと

令和6年度改定 令和5年までの減算数
虐待防止 1%減算 なし

 

ま と め

事業所の運営において、虐待対策を行うことは極めて重要なことです。

障がい者虐待防止法が施行され、通報の義務化と通報を受けた行政による実地指導の規定がされていますし、虐待が表面化すると、SNSなどにより、拡散されていきます。

なによりも虐待行為の多くは犯罪行為です。

 

虐待防止・身体拘束適正化研修

 

 参 考

平成27年度 厚生労働省調査資料 「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」

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