【リスク管理】障がい福祉事業所の財務上の失敗5選と回避法

【リスク管理】障がい福祉事業所の財務上の失敗5選と回避法

障がい福祉事業所の財務上の失敗5選とその回避法

はじめに

障がい福祉事業所は、地域社会の中で重要な役割を担っています。しかし、その運営には多くの課題があり、特に財務管理における失敗は事業の存続に直結する大きなリスクとなります。

本記事では、障害福祉事業所が陥りやすい財務上の失敗5つと、それを防ぐための回避策を解説します。正しい財務管理のポイントを理解することで、事業の安定と持続可能性を高めましょう。


1. 資金繰りの見通しが甘い運営計画

資金繰りの見通しが甘いと、事業運営に必要な資金が不足し、結果としてサービスの質が低下する恐れがあります。障がい福祉事業所では、入金タイミングが2ヶ月後ということもあり、予算管理を怠ると支払いの遅延や借入れの増加に繋がります。

資金計画を立てる際の具体的なポイント

資金計画を適切に立てることは、障がい福祉事業所の安定運営において欠かせない要素です。

ア 固定費と変動費の分類

固定費(例:家賃、光熱費、人件費)と変動費(例:消耗品費、利用者サービス費)を区分します。固定費は毎月の支出額を確定させ、変動費は過去のデータを参考にしながら平均値を算出します。

突発的な支出が考えられることから、設備の修繕費や新規サービス導入費用など、不定期に発生する可能性のある支出を考慮します。過去に発生した特別支出を参考にしながら、適切な予算を見積もりましょう。

イ 数か月先を見据えたキャッシュフロー表の作成

月単位の収支計画を立てる。毎月の収入と支出を記載したキャッシュフロー表を作成します。これにより、現金残高の推移を把握できます。表には収入と支出の実績欄を設け、予測値と比較しながら毎月の運営状況をチェックします。

万が一、収入が予測を下回った場合や支出が予測を上回った場合を想定し、その場合の対応策も考えておきます。

ウ 十分な予備資金を確保する

突発的な支出や給付費の返戻・過誤に備え、通常運転の3か月分に相当する予備資金を確保することを目安にします。利用者数が急減した場合でも、一定期間は事業を維持できる資金を手元に確保しておくことが重要です。

エ  定期的な見直しと更新

これまでの実績を元に収支計画を見直し、次月以降の予測に反映させます。計画にズレが生じた場合は、速やかに修正し、適切な資金配分を再設定します。

長期的な視点で、1年後、3年後など、長期的な資金計画も同時に作成します。これにより、事業拡大や設備投資のタイミングを検討しやすくなります。

 

資金計画は事業運営の羅針盤です。計画をしっかり立てることで、障害福祉事業所の財務リスクを軽減し、安定的な運営を実現することができます。継続的な改善を心掛けながら、事業所の成長に繋げていきましょう。

資金計画を立てる際は、収入と支出の予測を詳細に記載し、数ヶ月先までのキャッシュフローを把握することが重要です。予期せぬ出費に備え、十分な予備資金を確保しましょう。

 

2. 利用者負担金の徴収ミスや返戻の放置

利用者負担金や国保連返戻の管理が甘い場合、未回収金が累積し、事業運営に影響を及ぼすことから、定期的に未回収金の状況を確認し、回収プロセスを迅速に行うことが必要です。

ア  毎月の管理

利用者負担金は、毎月Excel等の表計算ソフトを活用し、利用者ごとの支払い状況を一覧表として記録します。

次に国保連の返戻ですが、多くの事業所は次月で再請求を行いますが、再請求時の再返戻対応から少しづつ未対応になる事業所が増加する傾向にあります。各利用者の返戻記録を作成し対応していくことが重要です。

イ  支払い期日のリマインダーを設定

カレンダーや手帳を活用して、支払い期日を明確に記載します。月初や締切前に確認するルーティンを作ることで、支払い漏れを防ぎます。

ウ  初期段階での明確な契約と説明

契約段階で利用者やその家族に、支払いのスケジュールや方法を十分に説明します。誤解を防ぐために、契約書の内容を確認し、利用者負担金に関する疑問が解消されるまで丁寧に対応します。

エ  期日を過ぎた場合の迅速な対応

利用者負担金の回収が遅れた場合は、まずは電話や手紙で丁寧に連絡を取ります。適切なコミュニケーションを通じて、利用者や家族との信頼関係を維持しながら回収を進めます。

オ  定期的な見直しとルーティン化

月末や四半期ごとに支払い状況を総点検し、請求の返戻と利用者・保護者からの未収金がないか確認します。

必要に応じて手順を見直し、未然に防ぐ体制を強化します。

 

3. 税務処理や社会保険料の未納・遅延

税務処理や社会保険料の支払い遅延は、事業所の信用を大きく損ないます。

税務や社会保険料を期限内に処理するためには、専門知識を持つ税理士や社会保険労務士のサポートが不可欠です。

納付期限を把握する仕組みを整える

ア 税務関連

消費税、所得税、法人税など、各種税金の納付期限をカレンダーやスケジュール表に明記します。

毎月・四半期・年次の納付スケジュールを事前に整理し、期日を忘れないようにリマインダーを設定します。

イ 社会保険料関連

厚生年金保険料や健康保険料、労働保険料(雇用保険・労災保険)の納付期限も同様に把握します。

納付期限の1週間前を目安に確認作業を行うことで、余裕を持った対応が可能になります。

ウ 日々の記帳を徹底

経費や収入の記録を正確に行い、税務申告に必要な情報を整理します。記帳のミスを防ぐために、収入と支出を正確に分類し、必要に応じて担当者が定期的に確認する仕組みを作りましょう。

エ 書類整理を効率化

領収書や支払い証明書など、税務申告に必要な書類を月ごとやカテゴリー別に整理し、紛失を防ぐために、紙媒体とデジタルデータの両方で保管することを推奨します。

 

4.  長期的な財務計画の欠如

障害福祉事業所の運営において、日々の財務管理に追われる一方で、長期的な財務計画を立てていないことがよく見受けられます。短期的な視点に偏ると、設備投資や事業拡大のタイミングを見誤り、結果として事業所の成長を妨げる要因となります。

長期的な財務計画を立てる具体的なポイント

ア 設備更新や修繕費の積立

老朽化する設備や施設の修繕費用を見越し、毎月一定額を積み立てる仕組みを作ります。

設備の耐用年数や修繕周期を把握し、適切なタイミングで資金を準備することが重要です。

イ 3~5年の中期財務計画を作成

次年度以降の収支予測を立て、事業拡大や新規サービス導入に必要な資金を見積もります。

補助金や助成金の活用予定も含め、安定的な収入源を確保する計画を明確化します。

ウ 事業拡大に向けた資金調達の計画

銀行融資やクラウドファンディングなど、事業拡大に必要な資金を調達する手段を検討します。

融資を受ける際には、事業計画書をしっかり作成し、収益性を示すことでスムーズな資金調達が可能です。

オ 財務指標を定期的にチェック

キャッシュフローや収支率、自己資本比率などの財務指標を定期的に確認し、健全性を維持します。

問題が発生した場合は早期に対応し、計画を柔軟に見直します。

 

5. 補助金や助成金の不適切な管理・活用

障がい福祉事業所では、補助金や助成金を申請していることがありますが、適切な管理がされていないケースが見受けられます。不適切な申請での助成金の返還命令や信用失墜を招くリスクがあります。また、補助金は着金までに自社持ち出し金が必要な場合も多く、財務を圧迫していくこともあります。

補助金や助成金の不適切な管理を防ぐ具体策

ア 補助金・助成金のルールを徹底理解する

補助金のガイドライン等を入念に確認し、何に使用できるかを明確にします。

助成金は雇用保険が原資のため、申請ルールを確認して、不明な点がある場合は、担当機関に問い合わせて事前に確認します。

助成金は非常に複雑ですので、社労士に依頼することも考えましょう。

イ 記録を正確に管理する

補助金の使用に関する支出明細を詳細に記録し、領収書や証明書を整理・保管します。記録は定期的に見直し、誤りや不備がないか確認します。

ウ 予備資金の準備を行う

施設系の補助金の場合は、当初予定の見積よりも多くの費用がかかる場合があることから、必要に応じて銀行融資などの資金調達手段を検討します。

エ 事前計画の作成

補助金の使用目的を具体的に計画し、事業計画書に反映させます。計画書を関係者全員で共有し、認識のズレを防ぎます。

 

まとめ

障がい福祉事業所の財務運営には、資金繰りの見通しや利用者負担金の管理、税務処理、長期的な財務計画、補助金・助成金の活用など、多岐にわたる注意点があります。

これらを適切に管理しないと、事業の信頼性や安定性を損なうリスクがあります。安定的な運営を実現するためには、日々の管理と共に、予備資金の確保や中長期的な計画の策定を徹底することが重要です。

また、専門家のサポートを活用しながら、財務リスクを最小限に抑える仕組みを構築しましょう。

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