新処遇改善加算について解説(令和6年度~)

新処遇改善加算について解説(令和6年度~)

 

 

新処遇改善加算について

福祉・介護職員等処遇改善加算(以下「処遇改善加算」といいます)は、福祉・介護職員の処遇(給与面等)を改善するために、事業者に対して支給される加算です。

福祉・介護職員等処遇改善加算は他の加算とは異なり、加算の給付金は、法人(事業所)が使用できるお金ではなく、必ず福祉・介護職員等に分配する必要があります。

これにより、職員の処遇を向上させ、人材の確保と定着を図る等により質の高いサービスを提供することを目的として平成24年に創設されました。

また、令和6年6月に、同年5月までの「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つの処遇改善加算を一本化(新処遇改善加算)することになりました。

新処遇改善加算は新加算Ⅰ~新加算4というように4段階に別れていますが、 例えば新加算Ⅰを取得すると新加算Ⅱ~Ⅳまでも含まれるということになります。 

 

一本化された処遇改善加算の加算率は、おおむね下図のイメージで、新加算Ⅳから新加算Ⅰになるほどパーセンテージが下がるのが特徴です。

受給期間

各年度(毎年4月1日から3月31日まで)

  • 年途中からの届出による受給も可能。

更新

毎年更新の手続きが必要(4月半ばまでの提出が多い)

処遇改善加算実績報告

毎年7月末までに、前年度の処遇改善加算の実績報告書を作成し、行政に届出を行う必要があります。

 

賃金改善実施期間について

記のいずれかを選択する必要があります。

 例:6月に算定する新加算の配分について
① 6月の就労に基づき、6月中に見込額で職員に支払うパターン
② 6月の就労に基づき、7月中に職員に支払うパターン
③ 6月サービス提供分の報酬が、8月に各事業所に振り込まれるため、8月中に職員に支払うパターン

 

新処遇改善加算の要件

新加算の算定要件は、月額賃金改善要件、キャリアパス要件、職場環境等要件の3つになります。

新処遇改善加算Ⅰ 新処遇改善加算Ⅱ 新処遇改善加算Ⅲ 新処遇改善加算Ⅳ
①月額賃金改善要件Ⅰ
②月額賃金改善要件Ⅱ
③キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
④キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
⑤ キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等) ×
⑥ キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件) × ×
⑦ キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件) × × ×
⑧職場環境等要件

区分ごとに2以上の取組(生産
性向上は3以上を選択)

〇 

見える化要件対象

見える化要件対象

× ×
⑨職場環境等要件

区分ごとに1以上の取組を選択(生産性向上は2以上を選択)

× ×

 

① 月額賃金改善要件Ⅰ(月給による賃金改善)令和7年度から適用

新加算Ⅳの2分の1以上を基本給または、毎月支払われる手当で分配する必要があります。

基本給以外の手当又は一時金により行っている賃金改善の一部を減額して、その分を基本給等に付け替えることで、本要件を満たすことも可能です(新規で新処遇改善加算を取得する事業所は除きます)。

この要件を満たすために、新規の基本給の引上げを行う場合、当該基本給等の引上げはベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること)により行うことを基本とします。

「毎月支払われる手当」

労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当を指します。
 また、決まって毎月支払われるのであれば、月ごとに額が変動するような手当も含みますが、月ごとに支払われるか否かが変動するような手当は含みません。

以下の手当は、新加算等の算定、賃金改善の対象となる「賃金」には含めて差し支えないが、「決まって毎月支払われる手当」には含まれない。

  •  月ごとに支払われるか否かが変動するような手当は含みません。
  •  労働と直接的な関係が薄く、当該労働者の個人的事情により支給される手当(通勤手当、扶養手当等)

(令和6年7月6日 福祉・介護職員等処遇改善加算るQ&A(第2版)問1-3)

 

② 月額賃金改善要件Ⅱ(ベースアップ支援加算未算定の場合のみ適用)

令和6年5月末日で旧処遇改善加算を算定しており、ベースアップ等加算を算定していない事業所については、令和8年3月31日までの間において、新加算を算定する場合、3分の2以上の基本給等の引上げを新規に実施しなければならない。その際、当該基本給等の引上げは、ベースアップにより行うことを基本とする。

(令和6年5月以前に処遇改善加算を算定していなかった事業所、令和6年6月以降に開設された事業所が、新加算を算定する場合には、月額賃金改善要件Ⅱの適用を受けない)

 

③キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)令和6年度中は対応の制約で可

ア  福祉・介護職員の職位、職責、職務内容等に応じた任用要件(福祉・介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
イ アの職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
ウ ア、イの内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知していること。

アイウのすべてを満たす必要があります。

 

④キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)令和6年度中は対応の制約で可

ア  福祉・介護職員と意見を交換※1しながら、資質向上の目標※2ⒶまたはⒷの事項に関する具体的な計画を策定※3し、研修の実施・研修の機会を確保していること。
Ⓐ  研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT等)し福祉・介護職員の能力評価を行うこと。
Ⓑ  資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。

イ  アについて、全ての福祉・介護職員に周知していること。

※1 意見交換の方法(対面、労働組合がある場合には労働組合との意見交換のほか、メール等による意見募集を行う等)

※2 資質向上の目標の例示

① 利用者のニーズに応じた良質なサービスを提供するために、福祉・介護職員が技術・能力(例:介護技術、コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力、マネジメント能力等)の向上に努めること
② 事業所全体での資格等(例:介護福祉士、介護職員基礎研修、居宅介護従事者養成研修等)の取得率の向上

※3 具体的な計画を策定の例(令和6年3月 26 日 処遇改善加算QA問4―4 )

 

⑤ キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)令和6年度中は対応の制約で可

ア  経験、資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。次のaからcまでのいずれかに該当する仕組みであること。

a 「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み

b 資格等に応じて昇給する仕組み(介護福祉士等の資格の取得などに応じて昇給する仕組みであること)
過去に資格を取得したような者が就業する場合も昇給が図られる仕組みであることを要する。

c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されている
ことを要する。

イ アの内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知していること。

  

⑥ キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)令和6年度中は月額8万円の改善で可

経験・技能のある障害福祉人材のうち1人以上は、賃金改善後の賃金の見込額(新加算等を算定し実施される賃金改善の見込額を含む。)が額440万円以上であること(新加算等による賃金改善以前の賃金が年額440万円以上である者を除く。)。

ただし、賃金改善が困難な場合であって、合理的な説明がある場合はこの限りではない。
・ 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
・ 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合

※ 処遇改善後の賃金「440 万円」については、社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含めずに判断する。

 

⑦ キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件)

新加算Ⅰを取得する場合は、福祉専門職員配置等加算(居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護にあたっては特定事業所加算)の届出を行っていることが必要。
※ 短期入所、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援等は配置等要件不要。

 

⑧職場環境等要件新加算ⅠⅡについては、令和6年度中は6つの区分から3つを選択し、それぞれ1以上、公表は不要新加算ⅢⅣについては、令和6年度中は全体で1以上選択

新加算Ⅰ、Ⅱを取得する場合は、6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。
情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表(見える化要件)する。

新加算Ⅲ、Ⅳを取得する場合は、6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。

➔ 職場環境要件について(令和7年度用)PDF

 

備考

キャリアパス要件Ⅰキャリアパス要件Ⅲとの具体的なについて。

  •  キャリアパス要件Ⅰは、職位・職責・職務内容等に応じた任用要件賃金体系を整備することを要件としている。
  • キャリアパス要件Ⅲは、経験、資格又は評価に基づく昇給の仕組みを設けることを要件としている。

 

新処遇改善加算の加算率

サービス区分 新加算Ⅰ 新加算Ⅱ 新加算Ⅲ 新加算Ⅳ
居宅介護 41.7 40.2 34.7 27.3
重度訪問介護 34.3 32.8 27.3 21.9
同行援護 41.7 40.2 34.7 27.3
行動援護 38.2 36.7 31.2 24.8
生活介護 8.1 8.0 6.7 5.5
短期入所 15.9 13.8 11.5
就労選択支援 10.3 10.1 8.6 6.9
就労移行支援 10.3 10.1 8.6 6.9
就労継続支援A型 9.6 9.4 7.9 6.3
就労継続支援B型 9.3 91 7.6 6.2
共同生活援助(介護サービス包括型) 21.1 20.8 19.2 15.2
児童発達支援 13.1 12.8 11.8 9.6
放課後等デイサービス 13.4 13.1 12.1 9.8
保育所等訪問支援 12.9 11.8 9.6

※相談支援、就労定着支援、自立生活援助は処遇改善加算の対象外となります。

 

新処遇改善加算の分配方法

職種により分配制限があった処遇改善加算が新加算になり分配制限が緩和されました。

①特に福祉・介護職員(※1)への配分を基本とする。

②「特に経験・技能のある職員」にも配分(勤続年数10年以上の職員を基本としつつ、他法人の経験や業務や技能等を踏まえ、各事業者の裁量で設定することとする。)

ア 介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士又は保育士、心理指導担当職員等

イ サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、サービス提供責任者

ウ その他研修等により専門的な技能を有すると認められる職員のいずれかに該当する者(※2)

③①②に重点的に配分することとするが、 障害福祉サービス事業者等の判断により、福祉・介護職員以外の職種への配分も含め、事業所内で柔軟な配分を認めることとする。 

 

※1 福祉・介護職員
ホームヘルパー、生活支援員、児童指導員、保育士、世話人、職業指導員、地域移行支援員、就労支援員、就労定着支援員、就労選択支援員、地域生活支援員、訪問支援員、夜間支援従事者、共生型障害福祉サービス等事業所および特定基準該当障害福祉サービス等事業所に従事する介護職、賃金向上達成指導員、目標工賃達成指導員、児童発達支援・放課後等デイサービスの児童指導員等加配加算におけるその他従業者

※2 強度行動障害支援者養成研修修了者、手話通訳士、手話通訳者、手話奉仕員、要約筆記者点字技能士、点字指導員、点字通訳者
盲ろう者向け通訳・介助員養成研修修了者、失語症者向け意思疎通支援者養成研修修了者、サービス管理責任者研修修了者、児童発達支援管理責任者研修修了者、サービス提供責任者研修修了者、たんの吸引等の実施のための研修修了者、職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修修了者、相談支援従事者研修修了者、社会福祉主事、教員免許保有者

 

新加算Ⅳ部分について、2分の1以上を手当やベースアップとして毎月支払うことが必要です令和7年度から適用

新加算Ⅳの2分の1以上基本給または毎月支払われる手当で分配する必要があります。

なお、請求後に国保連から送られてくる「福祉・介護職員等処遇改善加算等総額のお知らせ」では、新処遇改善加算の一括りでの記載になっているために、新加算Ⅳはいくら入金されてかを計算する必要があります。計算上は処遇改善加算の入金額の40%をベースアップや月毎の手当に配分していれば、新改善Ⅳの2分の1要件は満たします。

 

賃金改善額に含まれるもの

・ 処遇改善加算を分配したことで増加した事業所負担の法定福利費(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、児童手当拠出金、雇用保険料、労災保険料等)
・ 法人事業税における処遇改善加算による賃金上昇分に応じた外形標準課税の付加価値額増加分

  退職手当共済制度等の掛け金のような任意加入のものは含まない。

 

注意点

  • 一部の職員に処遇改善加算を集中配分することや、同一法人内の一部の事業所のみに処遇改善加算を集中配分させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと。 
  • 必ずしも全従業員に分配しなければならないわけではない(事業所(法人)全体での賃金改善が要件を満たしていれば、一部の福祉・介護職員を対象としないことは可能)
  • 上記職種以外にも指定権者で認めている場合があるので、各指定権者に確認してください。よくあるのが、看護職員等に処遇改善加算の分配は可能か?というものです。看護師が「福祉・介護職員かどうか」と「柔軟な配分を認める」という視点で指定権者で判断が分かれています。
  •  キャリアパス要件及び職場環境等要件を満たすために取り組む費用については、賃金改善に含めることはできません
  •  法人代表者(代表取締役、代表社員、代表理事 等)は対象になりません。
    • 但し、法人役員でも、直接支援職種に従事し、役員報酬とは別に賃金が支払われていれば、その賃金に対する改善分については加算の対象となります。(行政に要確認)
  • 賃金改善以前の賃金が年額 440 万円以上である職員であっても、新加算等による賃金改善の対象に含めることは可能となりました。
  • 労働保険料の納付が適正に行なわれていること

 

周知要件

賃金改善を行う方法等について処遇改善計画書を用いて職員に周知するとともに、就業規則等の内容についても福祉・介護職員等に周知する必要があります
従業員等から新加算等に係る賃金改善に関する照会があった場合は、賃金改善の内容について、書面を用いるなどして分かりやすく回答して下さい。

  • 処遇改善計画の内容をすべての職員に周知する必要があるので、全従業者が閲覧できるよう掲示板等への掲示や全従業者への文書による通知等を行うことなどにより、周知してください。

 

よくある質問

Q 職員への支払い方には、月払いや日額などの決まりがありますか?

A 決まりはありません。期末手当や時給の支払いも可能ですが、新加算Ⅳは毎月の手当やベースアップで支払う必要があります。

 

Q 給与明細上は、どうした方がよいですか?

A 給与明細をには毎月手当の場合は「処遇改善加算」などのの項目で支払うことが考えられます。

 

Q 実績報告時に支払い額が加算額を下回った場合、過誤の対象となりますか?

A 算定要件を満たさないため、過誤返還の対象となりますが、 不足分の賃金改善を賞与などの一時金として福祉・介護職員等に追加的に
配分することで、返還を求めない取扱いとすることもあります。

(令和6年3月 26 日 処遇改善加算QA問1―9 )

 

Q 派遣労働者、在籍型の出向者、業務委託職員も加算対象となりますか?

A 可能となります。

  派遣労働者や出向者は、賃金改善方法について派遣元(出向元)と相談し、加算を原資とする派遣料等の上乗せが、派遣元(出向元)

から支払われる職員の給与に上乗せされるよう、協議する必要があります。

また、キャリアパス要件Ⅲに派遣社員(出向社員・業務委託職員)や該当する昇給の仕組みが整備されていることを要する。

 

Q  法人本部の職員についても処遇改善加算の対象となりますか?

A  事業所で業務を行っていると判断できる場合には、賃金改善の対象に含めることができる。
(令和6年3月 26 日 処遇改善加算QA問2―7 )

 

WPP伊藤の考察

令和6年度処遇改善加算(新加算)は、令和7年度からの適用であったり、誓約書で猶予されているものが多く、比較的新加算Ⅱ以上を算定することが容易だったと思いますが、令和7年度から猶予されているものが無くなるので、新加算Ⅱ以上を取得している事業所は今のうちに整備しておくことが重要になってきます!

整備しておくことを怠り、処遇改善加算を取得している場合、運営指導(実地指導)で、過誤の指導を受けることが考えられます。

 

 

➔ 厚生労働省「福祉・介護職員処遇改善加算」を参照

 

当センターにご依頼した際のサービス内容や価格等につきましてのご質問は、お電話またはメールフォームでお問合せ下さい。

〇 ご依頼希望の方につきましては、料金表をご覧ください。

 

申し訳ありません。無料相談は行っておりません。

 

 

 

 

それ以外の方は、事業所の指定権者である都道府県庁や市町村役場の担当窓口へのご相談をお願い致します。

お気軽にお問い合わせください